或る吹雪の夜、北海道留萌線・明日萌駅の待合室に置き去りに
されていた赤ん坊。 1年前に最愛の妻を失った駅長の常盤次郎は、この子が妻の
生まれ変わりだと思った。
その子に、駅の名前から「萌」と名付けた。あれから11年、
昭和10年の冬。
常盤次郎(橋爪功)は、今日も汽車の発着と乗客の安全を
見守っている。その頃萌(柊瑠美)は、学校の帰り道、幼なじみの
竹次郎と雪の線路を歩いていた。トンネルに差しかかった時、
萌は一瞬躊躇した。「山越えてたら、日が暮れるべ」竹次郎に
急かされるまま、一歩踏み出した萌は、突然、鈍い音を立てて雪に
埋まってしまった。「萌!」竹次郎が慌てて萌の体をひっぱる。
だが、萌の足は線路に引っかかって動かない。トンネルの中からは
汽笛が鳴る。猛然と迫ってくる汽車。「竹ちゃん逃げて!」 死を
覚悟した萌。その時、何処からともなく一人の青年が飛び出し、
間一髪、萌を救い出した。
勝俣秀次(池内博之)と名乗るその青年は、この時、足に
怪我をして、しばらく竹次郎の両親が経営する中村旅館で
療養することになった。だが、この救出劇で町の英雄であるはずの
秀次には、何やら不審な陰があった。
数日後、町の警察がやってきて、秀次は“父親殺し”の
指名手配犯だという。「お兄ちゃんはそんな人じゃない。おとうさん、
お兄ちゃんを助けてあげて」 萌の必死の願いに、次郎は
「鰊番屋に行けば、追われている者を匿ってくれるらしい…」と、
秀次に告げる。
事件は一段落したものの、次郎には誰にも言えない悩みがあった。数日前に届いた一つの小包。
“川本フキ”(黒木瞳)、萌の母からだった。中身は赤い
マフラーだったが、次郎はどうしてもそれを萌に渡す気にはなれない。あれは2年前、一目、萌に逢いたいと言いながら、約束の日に、
最終列車まで萌を待たせたまま、とうとうやってこなかった母親…
2度までも萌を捨て、傷つけた女を、次郎は決して許すことは
出来なかった。「萌は、母親に逢わせない方がいい」と、中村旅館の
夫婦、松吉(石倉三郎)と幸子(萬田久子)に打ち明ける次郎。
だが、襖の向こうには、寝ているはずの萌がいた。その耳に、
優しい父の、哀しい決意が聞こえていた。
それから2週間後、秀次のいた部屋から、竹次郎が木彫りの人形を
見つけた。もうすぐ嫁に行く妹のためにと秀次が彫っていたものだ。
早く秀次に届けなければと、大人たちの反対を振り切って、
萌と竹次郎は雪深い小平の鰊番屋に向かった。元気に働く秀次に
逢えた萌と竹次郎は、無事に人形も手渡し、秀次も喜んでくれた。
束の間の再会に、父の哀しい言葉も忘れていた萌。
しかし、帰り際に見た番屋の名札に、萌は意外な名前を見た。
“川本フキ”…。わたしを捨てたお母さんの名前! 心ない運命は、
またもや萌の小さな心を激しく揺さぶった…。
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