昭和22年、折からの台風は、青函連絡船・層雲丸を襲った。
その頃、岩内町の質屋で3人を殺し、火を放った3人組みが
ボートで津軽海峡を本土へと急いでいた。層雲丸は沈没し、
多数の死者が出た。
しかし犠牲者の遺体を数えてみると、乗船者名簿の数よりも2体
多い。函館署の刑事(伴淳三郎)は、同時期に起きた
北海道岩内町の質屋強盗放火事件との関連を疑う。
その強盗殺人犯の3人のうちの1人は、復員服を着た大男の
犬飼太吉(三国連太郎 )と云う人物とわかった。弓坂刑事の執念の
追跡が始まった。
ボートで津軽海峡を渡る途中、トラブルが起きて2人を海に叩き
落とした犬飼は荒れ狂う海峡を無事に渡りきり、下北の花町で
娼婦の八重と一夜を過ごした。八重はてんしんらんまんな女だ。
恐山の巫女の真似をして犬飼を怖がらせ、はしゃいだ。
八重は犬飼の爪を切ってやった。犬飼の右手親指に
傷があった。別れ際、犬飼は八重に一掴みの札束を置いて
立ち去った。大金である。八重は後を追ったが犬飼の姿は
もう無かった。
弓坂刑事(伴淳三郎)が八重のところへ聞き込みに来たが、
八重は白を切った。
八重は借金を清算すると、東京へ出て働き始めた。辛酸を
舐めながらも、八重は頑張った。夜な夜な、八重は
大事にしている犬飼の爪の一片を取り出しては、感謝の報告を
するのだった。
それから10年の歳月が流れた。ある日、八重は新聞に犬飼の
顔を見た。「舞鶴の篤志家、樽見京一郎氏、3,000万円を寄付」と
ある。名前が違う、しかし、どう見ても犬飼の顔だ。
八重は舞鶴へ向かった。犬飼にひと目会ってお礼が言いたい。
立派な屋敷の応接間で待つ八重の前に、口髭をたくわえた
樽見京一郎が現れた。「犬飼さんですね、お懐かしゅうございます」
八重はしみじみと礼を述べたが、樽見は、人違いだ、自分は
樽見京一郎であると言い張った。
だが、八重は見た。樽見の右手親指の傷跡を。「やっぱり、
犬飼さんだ!」八重は否定する樽見ににじり寄り、樽見ともみ
合いになる。ボキッ!八重の首の骨が折れた。そこへ、樽見の
秘書が来て殺人現場を見てしまった。樽見はすかさず、秘書の
首を絞めた。
海岸で男女の死体が発見された。女の所持品の中に、樽見の
新聞記事の切り抜きがあったことから、樽見が参考人として、
警察の調書を受ける。樽見は事件との関りを否定するが、八重の
荷物の中から、爪が出てきたことを告げられ、樽見は
愕然とするのだった。
牢獄の樽見に今は刑務所の警備人となっている元刑事、弓坂が
接見した。弓坂は懐から小さな包みを取り出し、樽見の前に差し
出した。「これが何だか解りますか?・・・・灰です。あなたが
津軽海峡を渡った船を焼いた、その灰です。」弓坂は迷宮入りに
なりかけた函館の事件の記録として、灰を後生大事に
持っていたのだった。「北海道へ連れて行ってくれ、そこで全部話す」樽見が叫んだ。樽見はまだ何も具体的な供述をしていないのだ。
青函連絡船の甲板に刑事達に付き添われた樽見がいた。弓坂が
海に献花を投げた。経をあげる弓坂。花束を手にした樽見だったが、一瞬の隙を見て海峡に身を躍らせ、波の中に消えていったのである。
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